「House for the heart」プロジェクト

アイスランドの荒野でのオフグリッド建築

「House for the heart」は、アイスランドのESJA Architectureと構造設計事務所Structured Environmentとの協働によって開発・建設された、自然環境に配慮した遠隔地向けのシェルターです。繊細な自然環境における人の存在を、謙虚さと創意、そして敬意を持って支えることを目的に設計されています。

風や水、そして時の流れによってかたちづくられてきたアイスランドの風景に深い敬意を示しつつ、この建築は静かな避難所として、そこを訪れる人々に穏やかな時間を提供します。

広大な大地を歩き、尾根を越え、川をたどって高地の奥深くへと進んだ経験のある人ならだれもが経験したことのある、自然が身体と心にもたらす深い影響。「House for the heart」は、そんな旅のひとときに寄り添う「休息の場」として設計されています。長い一日の移動、探検、そして身体的な挑戦のあと、この小さな家は、集い、食事をし、静かに振り返り、そして眠るための場所になります。友人たちとともに過ごしていても、ひとり静かに過ごしていても、この空間は自然の中に身を置いたまま、さりげなく心と体を包み込んでくれます。

 

オフグリッド生活 — 実用的な必要性と意図的なデザインの融合

アイスランドの遠隔地ではエネルギー網への接続がほとんど不可能です。しかしこの家は再生可能な天然の資源のみに依存することで、課題を解決しています。天然の資源とは、自然風、日光(年の半分利用可能)、そして雨水です。

水は現地で採集・加熱され、シャワー、料理、暖房、衛生などの日常の活動に使われます。使用後の水はろ過され、環境へ最小限の影響で戻されます。このシステムは循環型システムであり、水は降り注ぎ、使われ、戻るというふうに、自然を枯渇させることなく生命を支えます。

電力は風力タービンによって供給され、明るい季節には太陽光パネルが補助します。このシステムは、照明、調理、機器の充電、そしてコンポストトイレの動力といった必須のニーズを支えるように最適化されています。さらに、小型のエタノール暖炉が寒い日に追加の暖かさを提供します。

 

独立と共同の両方を支えるデザイン

建築は3つのモジュール状のボリュームで構成されており、あらかじめ工場で製作されて現地に輸送されます。これらは合わせて最大8人を収容可能であり、共同生活のための空間と静かな隠れ家の空間の両方を提供します。建物はコンパクトですが、居心地の良さがあり、風景に調和して周囲を圧倒しません。

内部は温かみのあるシンプルな素材でまとめられています。大きな開口部からは周囲の景色が広がり、ただ近くにいるだけでなく、自然の中にいる実感を強く感じさせます。モジュールは、交流と親密さの両方を育むように配置されており、訪問者が食事を共にしたり、静かに思索したり、季節の移り変わりを快適に過ごしたりできるようになっています。

ESJA Architecture提供

「Heart of the House」は単なる住まい以上のものです。自然を感じ、ゆったりとした時間を過ごし、身軽に暮らすための枠組みです。必要最低限のものだけを備えることにより、本当に大切なものと再確認する手助けをし、身体のみならず心のための家となります。